研究概要 |
岩盤の風化に関する研究のうち,風化機構についてはかなり詳しく研究されているが,任意の風化環境における風化速度については,経験式すら確立されていないのが現状である. そこで本研究では,岩盤の風化速度(dZ/dt)を表す経験式の構築を目的とした.ここに,Zは風化帯の厚さ(地表面に対して垂直方向における岩盤表面から風化フロントまでの深さ)であり,tは岩盤の風化年数である.普通の斜面では,風化開始年代および風化物質の削剥量の特定が極めて困難ないし不可能である.しかるに,侵食段丘面の直下の基盤岩石の場合には,段丘面の離水年代を風化時間と見做すことができるし,薄い段丘堆積物に覆われているために風化物質の除去がないと考えれる.そこで,離水年代の明らかな秩父盆地と房総半島先端部に発達する14系統の侵食段丘面(t=70年〜7万年)の44地点において,弾性波探査,ボーリング,テストピット掘削により,基盤岩石(第三紀堆積岩)の風化帯の厚さを測定した. その結果,風化帯の厚さと風化時間の関係は,Z=at^βの経験式で表された.ここに,αとβは定数であり,αの値は,強風化,中風化,弱風化の風化帯のそれぞれについて0.48,1.2,3.2であるが,βは0.75というほぼ一定の値を示した.ゆえに風化速度(dZ/dt)は,強風化,中風化,弱風化の風化帯の順に早いことが明かになった.今後は種々の岩石物性をもつ別の岩石について,この種の経験式の確立が必要である.
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