味覚受容体あるいはそれと直接相互作用する信号変換機構が関与すると考えられるショウジョウバエの味覚突然変異を利用して、その遺伝子がコ-ドする蛋白質の実体を明らかにすることがこの研究の目的であるが、今年度は特に遺伝的な解析を目指し以下のような研究をおこなった。 1.ショウジョウバエのトランスポゾンP因子を味覚遺伝子Treの存在するX染色体上に挿入させ、伴性の味覚突然変異を多数分離し、その中からP因子DNAプロ-ブのハイブリダイゼ-ションによって、挿入部位を唾腺染色体上で確認した。トレハロ-スに対する味覚応答に伴性の変化のあった系統がやく10系統得られたが、そのうち少なくとも2系統にP因子の挿入が認められ、そのうち1系統はTre遺伝子近傍にあることがわかった。P因子で標識された遺伝子を次年度でクロ-ニングする予定である。 2.味細胞は比較的大型の細胞で、細胞体は口器の唇弁部分に集合している。大型のニクバエを用いて約13000個の唇弁を顕微鏡下で集め、約100ugのmRNAを抽出、精製した。次年度にこれをもちいてアフリカツメガエル卵細胞での発現系の確立を目指す。
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