哺乳類細胞染色体DNAでは、複製単位(レプリコン)が群をなして逐時的に複製すると考えられているが、レプリコンとしての構造が明らかにされているものはない。ここでは薬剤による同調法を用い、S期最初に複製するレプリコンの構造を明らかにする事を目的としている。既にヒドロキシウレア単独を用いた同調法で全ゲノムの約1%が複製された時に複製可能なレプリコン由来のDNA断片(約4kb以下)を5種類クローン化している。 S期初期に複製したDNAよりゲノミックライブラリーを作製し、それより現在得ているクローンのうち1つのものについて3個のゲノミッククローン(全長約60kb)を分離した。このうち約40kbの領域から6ヶ所プローブとして使用可能なDNA断片を決めた。アフィディコリンとヒドロキシウレアを併用した同調法を用いて新生鎖を約20kb以下の状態まで伸長させ、それぞれのプローブの認識する制限酵素断片の複製した量を比較した。その結果40kbの領域中、中央やや左よりの部分で多くその両脇では少なくなるが、右端の部分で再び多くなった。 この事は複製開始が効率良く起る領域と悪い領域がこの40kb中にある事を示す。またレプリコンのサイズは50〜200kbだと考えられている事から、もし複製開始点が中央左よりと右端に存在するならば、約20kbという例外的に小さなレプリコンを単離した可能性と、2ヶ所開始点を持つレプリコンの一部を単離した可能性が考えられる。この点を検討するために右側に隣接したゲノミッククローンの単離を進めている。またこのような構造がS期初期に複製するレプリコンに共通したものかを調べるため、他のクローンのゲノミッククローンの単離も進めている。
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