装置は完成し、レチナ-ル系色素蛋白を含む膜断片の微弱蛍光から光反応をマイクロ秒の時間分解能で実際に測定できた。成果を以下に挙げる。 1.光反応駆動のためのパルスレ-ザ-、蛍光励起のためのcw光源、測定光学系、光子計数測光部ならびにデ-タ解析ソフトは完成した。 2.バクテリオロドプシンを含む膜断片の測定を行ない、光化学サイクルが蛍光法で追跡できることを明らかにした。その結果、吸収スペクトルから識別しにくい中間体の挙動を極めて正確にとらえること、さらには共鳴ラマン法とくらべ、低い励起密度で測定が可能であるため副反応をおこさずに測定できた。 3.バクテリオロドプシンの光化学サイクルにおける中間体が生理的な条件とほぼ変らない輻射下においても第2の光子吸収し、新たな光サイクルを形成することを見いだした。この反応の割合は膜懸濁液のpHや塩濃度に強く依存する。このことから量子収率の報告値の間の不一致の理由が明かとなった。 装置ならびに試料についての現在までの問題点を以下に挙げる。 1.反応駆動パルス光源の不安定性:自作レ-ザ-のため安定性、強度、ノイズの面で遅れをとっており、測定に熟練を要する。市販のNa:YAGレ-ザ-等を使用したい。 2.蛍光励起光の迷光:試料の蛍光は微弱なため、励起光の散乱を除くのに熟練を要する。Xeランプを分光するよりも指向性の良い連続発振色素レ-ザ-を使用したい。 3.検出器内部の熱電子放出によるノイズ:光外蛍光の観測ではS/N比をあげるために積算時間を長くとらざるをえず、光源のドリフトや試料の経時変化がある。光電子増倍管の冷却を必要とする。
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