研究概要 |
平成3年度の研究目標は6量体のイセエビ・ヘモシアニンのX線小角散乱パタ-ンを測定し,その結果とモデルから計算した散乱パタ-ンとの比較を行うことであった。解析には次の3つのモデル;単球モデル,サブユニット(6球)モデル,原子座標を球の中心とした多球モデルを用いた。 結果:単球モデルはsubunitを半径58Aの一つの球として6量体の散乱を計算した。この散乱パタ-ンは実測に比べて深い切れ込みを持ち,カブトガニHcの構造を解析した時のように,単純なsubmultiple 1個の球で6量体ヘモシアニンはsimulationできないことが分かった.しかし,距離分布関数の計算結果はかなり実測と良い一致を見せた。6球モデルではsubunitを半径29Aの1つの球として6量体のモデルを組み立てて計算した。単球モデルに比べて散乱パタ-ンの極小位置の切れ込みは実測の6量体に近づいている。しかし距離分布関数の方を見ると,30A付近の肩が実際のパタ-ンに比べて大きくなって不一致を示している。これはsubunitの積み重ね部分が実際とは少し違って,モデルではくびれが強いことを示しているものと思われる.結晶座標からの原子多球モデルによる6量体の計算パタ-ンは,Coseによるmultiーsphere modelを用い,α炭素の座標に注目した多球モデルを用して計算した。球の半径は,Hc全部の各α炭素間距離の平均の1/2である1.9Aを用いた.原子多球モデルの計算散乱パタ-ンはh=0.12Aまではほぼ6量体Hcの実測値と同じパタ-ンを示した。距離分布関数は極大部分のパタ-ンが少し形が異なっているが全体のパタ-ンは非常に実測に近いものである。このことからmultiーspher modelにより溶液中のX線小角散乱パタ-ンを予想することはresonableであろうと思われる。次年度は,6量体のモデルを基にして12量体,24量体,48量体へとモデルの拡張をはかっていく計画である.
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