研究概要 |
平成3年度は,6量体構造を持つイセエビ・ヘモシアニン(Hc)のX線小角散乱測定を行った.その結果,X線結晶解析により得られた構造とX線小角散乱により得られた水溶液中Hcの構造はほぼ同じであった. 平成4年度の当研究の目的は,分子量が大きいためX線結晶回析により解析されていない12量体Hcの水溶液中の分子構造をX線小角散乱法により推定することにあった.モデルとして1)〜3)を用いた. 1)大球モデル:6量体の準基本単位(submultiple)を1個の球とみなしたモデル.2)小球モデル:subunitを1個の球とみなして6個の球で準基本単位を作った.subunitはX線結晶解析に従い配置したモデル.3)原子座標モデル:X線結晶回析像で得られたsubunitの原子座標のα炭素を球の中心にしビーズをつなげた.subunitの配置は2)モデルと同じにした. 12量体Hcとしてカブトガニ(腿口類)の1/4量体,タカアシガニ(甲殻類),アメリカザリガニ(甲殻類)を用いた.submultipleの構造はイセエビと同じと仮定して,その組み上げ方を2),3)モデルについてa),b)の両方の組み上げを検討した. a)submultipleの中心軸を結んで積み重ねたモデル. b)submultipleの側画同士を重ねたモデル. その結果,腿口類12量体カブトガニ・Hcの構造は,b)モデルを採っていた.甲殻類ザリガニならびにタカアシガニの12量体Hcはsubmultipleの積み重なり方がa)となっていた.2種の綱の異なる生物のHcではsubmultipleの立体配置に差があることが明かとなった。24量体,48量体への2),3)のモデルの適用は現在行っている所であるが、モデル内の粒子数の2乗に比例した計算時間を必要としている.
|