1.研究目的:計算・弁別・判断など視覚認知場面での視線移動から、精神遅滞児が視覚情報をどのように取り込み、活用しているのかを追跡し、個々の子どもに即した有効な視覚刺激呈示方法をみつけることにより彼らの学習を促進させる手だてを探ることを目的とする。 2.研究経過:初年度である平成3年度には、高解像度液晶ビジョンを用いて60インチのスクリ-ンに呈示された視覚認知課題を頭部に装着したCCDカメラで画像化し、それを視線位置と重ね会わせるシステムを構成した。このシステムを用いて幾何図形や数課題に取り組んでいる間の注視点を連続的に記録して、子どもが課題解決に達するまでに視覚課題をどのように見ているのかを定量的に検討した。 3.これまでに得られた知見は以下のとおり。 (1)記録装置の特性上、動きの激しい精神遅滞児については無拘束条下での視線記録は因難であり、その場合顎は固定して記録せざるをえない。 (2)比較的容易な課題の場合、刺激呈示した直後にほとんど視線を動かすことはなく回答に至っている。しかし、課題が困難になると刺激図形を比較したり、探索したりするような視線の動きが目だつようになる。 (3)遅滞児では個々の凝視点での停留時間が延長しており、探索にあたっても同じ所を繰り返し見るなど効率的な探索に困難性が認められた。 4.今後の課題は以下のとおり。 (1)授業など現実的な場面での検討をおこなうため、無拘束状態で記録をおこなえるよう視線検出装置を改良する必要がある。 (2)子どもの認知能力や学習課題についての到達度は個人差が大変著しく、子どもの実態に即した課題を呈示するには、種類や程度が異なる刺激・教材を豊富に用意する必要がある。 (3)教育現場教師と連携し、的確な子どもの実態把握をする必要がある。
|