「教育化学」を応用化学の一つと考えるにあたり、その具体的な内容および方法論を明示させる必要がある。そのために化学のもっている特徴をはっきりさせ、その手法が教育効果としてどのような利点を持っているかを検討した。 1.化学の特徴は実験科学として「帰納」と「演繹」が最も調和のとれた学問であり、優れた化学の研究はその両面がはっきりしていることがわかる。短時間でそのことを理解させるには、学習者が身を接して行なうようにしなければならない。我々の実践は化学教材実験において、テ-マ設定から実験計画等すべて学習者が行なうようにした。この方式でわかったことは、(1)文献調査の不足(2)影響を与える因子の条件についての未検討完全(3)類似のものへ不拡大。これらはいずれも科学研究の基本であり、また、この考え方は科学のみならず、真実を追求する過程として必要なことである。(1992年3月日本化学会63年会で発表) 2.次に、実験そのものに含まれている教育面をとりあげた。実験としては「蛍光現象」を具体例にあげた。(1)ミスを起こさないための準備:例えば器具洗い一つをとってもおろそかにすると、測定デ-タそのものの信頼がなくなる。(2)数値の評価はその反応の本質を理解しなければならない:蛍光の濃度消光現象を知らないと正しい測定ができない。(3)ちょっとした変化を逃さない観光力:スペクトルの異常から光発色(フォトクロミズム)を発見した過程。 3.成果を明確にできる教材として色素を用いたポリ塩化ビニル(PVC)による陰イオンの簡便目視分析の教材開発を行ない、多人数による自然水の一斉調査を試みた。環境教育の実践教材として広く利用が可能である。(愛知教育大教科教育センタ-研究報告16号に発表) 次年度は継続して、教育化学の筋道を完成させたい。
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