平成5年度は三年間にわたる研究の最終年度に当り、中学3年に進級した被験者に予定通り一度の調査(第5回)を七月に計画した。ところが、一つの中学校では調査実施責任者の突然の入院により調査実施が十月にずれ込んだ。認知と情意の両学力間の関係を調べるこの研究においては、このずれは決定的ではないと判断し、この学校の資料を他の三中学校のものと一括処理した。この処理による不自然さはデータにも現われていない。 平成5年度の第5回調査を実施したことにより、第1回以降のすべての調査との間における因果的優越性を検討することが可能となった。1年を越える時間間隔をもつ因果関係の研究は、本研究がわが国において最初である。 平成5年度の第5回調査とその直前の第4回調査との間には、1%水準で有意な優越関係は35対中には一つもなく、5%水準では4対あり、このうち情意的学力が原因となる方向をもつものが3対であった。有意水準を20%までに広げると20対あり、このうち情意的学力が原因となる方向をもつものが13対あった。 中学1年2学期と中学3年1学期の2時点の場合には 1%水準で有意な対が3対、5%水準まででは13対、20%水準まででは25対、第三変数の介入を伺わせるものが2対あった。 既に報告した結果を含め本研究で得られた結果は、中学1年における認知的学力と情意的学力が共に中学校3年間の両学力に大きな影響を持ち続けることを強く示唆ている。 知能と因果的優越性との関係については論文により総合的に公表する予定である。
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