社会科教育としての総合学習のあり方を追究しようと、研究上の二つの接近方法を考えた。一つは、社会科の主要テ-マとして呼ばれている国際理解の視点と枠組みから追究してみようということである。他の一つは、歴史的な優れた実践を堀り起こし、今日への視点を探るということである。上記の二つの接近方法は、今年度中にある程度深めることは出来たが、まだまだ十分な成果にはなっていない。以下、二つの方法の成果について触れておく。 前者の国際理解の視点からの研究は、国際理解を、「アジア認識」と「内なる国際化」の問題に限定して考えてみた。そのために、各地の実践資料の収集や関係者、教師へのインタヴュ-を試みた。調査地としては大阪市、川崎市、東京の荒川区など、外国人の集住する地域を取り上げた。また、埼玉県荒川村における「中国帰国者子弟」を巡る教育も調査した。とくにここでは国際理解と人権教育の総合視点が不可欠であることが認識された。尚、アジア各国の資料や実践も広く集めた。 後者については、戦前の郷土教育や生活綴方教育、戦後の生活教育の資料を収集し、歴史的な総合学習実践から今日への視点を明らかにしたいと考えた。 なお、教育課程上の問題として、「総合学習」を教科領域以外に設置し、実践している学校を、滋賀県や三重県を訪れ、参考にした。とりわけ三重県伊勢市の東大淀小の実践とカリキュラムは、研究を進める上で最も参考になった。
|