本年度は、総合学習について二つの課題をもって研究を進めた。一つは、人権教育の立場にたって総合的社会認識に迫ること、二つには、人権・民族の視点にたって社会認識教育の歴史に迫ることであった。 前者については、各地の同和教育、人権教育の研究推進枝から資料を収集したり、実際に授業参観の機会を多くもった。長野県駒ヶ根中学校、横浜市中村小他、埼玉県唐古小学校などからは特に具体的資料の提供を受けることが出来た。また、単に人権教育から考えるだけではなく、教育課程全体の視点からも資料を収集した。社会科という一教科ではなく、新しい教科設定を試みる研究枝からも示唆を受け、とくに東京都の錦華小学校では、授業分析を基盤とした教育課程研究に参加させて頂いた。 後者については、人権と民族認識はどう教育されてきたのかという立場から、昭和のはじめから昭和20年頃までを対象に資料収集に力を入れてきた。とくに朝鮮人に対しての差別、偏見の問題、植民地支配の問題を中心として、関係機関から教育資料を収集した。東京では、国立国会図書館憲政資料室、外務省外支資料館、学習院大学東洋文化研究所、東京経済大学、岩手県斉藤実記念館などを訪門し、資料を複写した。ここからは、戦前期の民族教育資料と共に、朝鮮人自身により作文教育や民族教育が実践されたことが明らかに出来た。 現階段では収集した資料を十分に検討し終えていないが、来年度は整理分析を進めたい。その上で、人権教育と国際化の視点にたつ社会認識教育の歴史的推移と今日的課題を明らかにしていきたいと考える。
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