本研究は、総合学習や総合学習的実践においての社会認識育成の問題を取り上げた。その際、総合学習と教科としての「社会科」との関係はいかなるものかと言う事を中心に進めた。研究は、総合学習の歴史的資料、および今日の優れた諸実践についての資料を収集した。その上で、総合学習をいくつかの類型に区分し、なかでも社会認識、地域認識を深める典型的な総合学習実践を具体的に分析した。その一つが三重県伊勢市の東大淀小学校の場合であった。 これらの総合学習研究の進展のなかで、たんに子どもの立場からの総合的社会認識、生活認識を問題にするだけではなく、社会科の基本理念でもある国際認識、および人権教育の視点をも加え分析していくことになった。本研究のII部では具体的には、民族を巡る教育について検討したのもそのためであった。はじめに、教育史的な資料の収集と分析、さらに在日韓国・朝鮮人問題について地域調査を進め教材を作り、その上で小学校での実際の授業づくりを試みた。横浜の小学校の先生との共同研究で、既存の社会科にとらわれない実践を試みた。そのことによって、児童の認識が、人間的な共通性の理解、民族的偏見の克服、民族共生の認識という問題に迫っていった。従来の社会科の枠組みを乗り越える内容編成によって児童の心の問題や生活意識の問題にかかわれたと考える。以上のことを踏まえて、既存の社会科の領域内容を考える手立てとした。
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