本年度の研究では、ヴフテマスの基礎部門の造形教育の内容を明らかにするために、基礎部門の担当者で重要な役割を果たした、アレクサンダ-・ロドチェンコについて考察を行った。また、美術科の教材研究として、教科書の題材分析を行った。 研究報告のひとつとして「ロドチェンコについての考察(1)」を発表した。この報告は継続するもので、今回、(1)ではロドチェンコの制作活動の概観を述べ、彼個人が桜作者として、いかなる表現形式と造形思考の変遷を迪ったかを年代を追って明らかにした。その結果、ロドチェンコの作品全般にわたって視覚言語による作品が多く見られ、特にヴフテマスの開設期においては、彼の構成主義と生産主義の造形思考が基礎教育での造形教育にも反映していたと考えられる。継続研究として、ロドチェンコの基礎教育での礎覚言語教育を行っている。 次に、現在の美術科教育の教材研究として図画工作科と美術科の教科書の分析を行った。現行の教科書の題材を取り上げ、それらのなかで、視覚言語を重視している題材を抽出し、全体の題材構成について「美術科教科書に見る視覚言語について」として報告した。現行の教科書では個々の題材についての解説が少なく、視覚言語についての記述もほとんどない状態である。視覚言語能力の教育や向上のためには、個々の表現分野において、造形要素と造形文法の記述を行い、作品と視覚言語の関連性を明らかにする必要があると考えられた。
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