美術科教育における視覚言語能力の研究として、次の2つの観点から研究を行った。ひとつは歴史的な検証から、バウハウスとヴフテマスにおける基礎教育の内容について明らかにした。次に、視覚言語能力の育成のための教材について、小学校図画工作科と中学校美術科の教科書を中心に、各々の教材の中での視覚言語の内容の取り扱いについて調査、研究を行った。 視覚言語の歴史的考察については、バウハウスとヴフテマスの基礎教育の内容について明らかにした。その内容については、特に、視覚言語を重要視するデザインの分野について検討を行い、論文「デザインとデザイン教育ー基礎教育のもつダイナミズムー」で明らかにした。また、ヴフテマスの関連からロドチェンコを取り上げて、作品制作を通して視覚言語の内容を明らかにし、論文「ロドチェンコについての考察ー制作活動の概略についてー」を報告した。これらのことから、視覚言語能力はデザインの分野だけに限らず、美術の表現の多様性の中に存在することに、その意義があることを明らかにした。 つぎに、視覚言語の教材については、構成・デザインの分野において明らかにするために、論文「構成的方法による美術科教育の展開」を著し、教育実践を含みながら、中学校美術科の視覚言語能力の取り扱いについて述べた。また、小学校図画工作科に近年、導入された造形遊びの分野のなかで、視覚言語や構成の能力の内容について明らかにするために、口頭発表「造形遊びと基礎造形」、同じく「造形遊びにおける構成的意義」を行った。また、図画工作、美術の教科書の教材分析を行い、論文「美術科教科書にみる視覚言語について」を報告した。
|