研究概要 |
後期仏教大乗論典は、そのチベット訳文献資料研究とあいまって、その訳語語彙の検討、術語使用例の分析、他のインド典籍との関連の解明など、総合的な研究が要請されている。本研究は、そのような展望のもとに、現在までの後期インド仏教論書の語彙研究の成果の統合化し、電算化することによって、かつての手作業ではなしえなかった多量のデー夕に基づく文献解析をおこない、術語使用例の抽出分析に基づく訳語と原語と対照表的索引を作成し、その論典の文献研究、解釈を試みようとするものであった。そこで、つぎのような研究方法を採った。 1)後期仏教論典を主にチベット訳などのテクストをデータ・ベース化することから電算処理による文章解析を可能にする。2)とともに、現時点までの国内外の関連論書の訳語語彙研究を前提として、サンスクリット語原典が散矢している当該論書の原典形態を再構成しながら厳密な文献研究を行なう。3)さらに、その訳語術語使用の特異性等の言語的分析と術語用法解析の成果を資料として、その思想史上の位置を解明する。 1)については、国内外の主要文献出版に基づく原典の入力を試み、多くの文献の全文テクストデータが蓄積された。しかしまだ校正未完了のため公開には時間的余裕が必要とされる。2)については、文章解析の為にはさらに多くの参考資料のデータが必要とされ、特定の文献のサンスクリット還元作業としてはさほどの進捗はみられなかった。3)については,Pramanavarttika内部で使用されるいくつかの学術用語を検索分析することから、その著作の思想史的意味や文献解釈にいくつかの新しい知見を得て、学術論文として結実した。また、チベット語訳だけが残されているRatnakarasantiの著作の思想史的位置についても、術語使用の検討などから、密教学的見地と一般仏教的見地との統合化された見地からの研究が実を結んだ。
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