研究概要 |
先づ「映像」の基本的な概念を整理するため,写真,映画の文献を中心に,これまでの研究過程で収集できなかったもの及び新しく出版されたもの,さらに体系的な歴史に関するものなどを収集し,それらの分析整理を行い,カ-ド化し,領域,主題ごとに分類した。それらはさらに,過去の研究で整理されたカ-ドを含めてコンピュ-タにデ-タ・ベ-スとした入力され,一方で又,写真や映画の初期の歴史における重要な作家の作品,ビデオ・ア-トの作品のデ-タ・ベ-ス化も行い,文献資料との対照・検索ができるようにした。それらの資料は膨大なため,この作業は現在も継続中である。 映像の技術に関しては,特に18世紀後半の産業革命以後の技術の意味について研究し,その所産としての写真及び映画の技術とテレビ・ビデオの技術を区別し,それらの技術の基本的性格を考察し,他の技術との連関性やそれらの技術のもつ発展性の相違を研究した。特に後者の技術ーエレクトロニクス技術ーの戦後における著しい発展は,写真や映画の映像を巻き込み,映像における表現形式の多様化をもたらし,その概念の曖昧化の原因の一つになっていると考えられる。それは,その技術が写真や映画の技術に比べて,開かれた技術的連関性を有しているからであるといえよう。 その技術を基盤とした芸術として,1960年代後半からの「ビデオ・ア-ト」があげられるが,最近ではさらに様々な表現形式が生れ,その芸術的基盤を論じることが極めて困難な様相を呈している。又,それらの芸術的表現のテレビ放送との結びつきがみられ,ますます写真,映画,テレビ・ビデオのジャンルとしての区別の意識は希薄化している。そのような状況を背景として,「映像」は単に包括的ではない,積極的な意味を担いつつあり,そこからその芸術性も問い直されねばならない。
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