読み(reading)の心理学的検討を動的有効視野の吟味、という立場で取上げたのはごく最近になってからである。読みの研究に新生面が開かれたのは、いわゆるム-ヴィングウインドウ法が開発されてからである。今回の研究では、漢字仮名混じりの文の読みの有効視野の測定においてム-ヴィングウインドウ法を開発、導入した。そして、周辺視情報が有効視野の大きさに及ぼす影響を検討し、以下の結果を得た。 1、有効視野の大きさは、漢字仮名混じり文(漢字含有率30%前後の文章)で約4ー6文字(水平差し渡し径)であること。 2、有効視野の大きさは文字の空間周波数特性(仮名や漢字の複雑性)によっても変化するが、他方意味的特性によっても影響を受ける。たとえば、漢字はその表意的特性により、仮名より有効視野を拡大させる傾向をもつ。 3、以上のことは、中心窩と傍中心窩(近周辺視を含む)で同時並列的に処理される文字数が4ー6文字程度の制約をもつことを示唆する。この有効視野の範囲についての制約条件は読みのモデルの構築の初期条件として重要な意味をもつ。
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