本研究は、「国際化時代におけるイギリスと日本の生涯学習社会の比較研究」と題し、もともと3年にまたがる研究計画であったが、ついた予算は2年であった。そのため3年目に行なう予定の日本とイギリスの比較研究までは手が伸びなかったが、それでもイギリスの生涯学習社会の課題を明らかにしえたことは大きな収穫であった。 初年度は、イギリス各地の小学校・中学校の学校開放の実態をみた。イギリスでも生徒数が減少傾向にあり、各地の学校に余裕教室が生じつつある。そのため学校開放が進んでいる地域では、これまで伝統的に夜間、成人に開放していた教室を日中も開放するなど、従来よりも進んだ政策を展開している地域も出始めている。しかし、88年のサッチャー改革によって地方教育局の権限が縮小し、理事会や父母の力が強まっている地域では、成人教室を縮小し、ナショナル・カリキュラムに対応して子供の教育の方を重視する所も出始めている。イギリスの伝統的な、地域の学校の開放による生涯学習のスタイルは、いろいろな意味で現在大きな曲がり角に直面している。 ところで、初年度の地域の学校開放の事例を扱っているうちに、我が国との関連でみのがせない問題と思われたのは、外国人労働者にどのように開放していくかということである。そこで二年目は、イギリスの外国人労働者の多い地域を中心に「イギリスの多文化・多民族教育」の実態を中心にみることにした。その結果イギリスでは、かなり多様な外国人労働者の学習参加のみられることが明らかになった。特に、ブラッドフォードのように人口の17%も外国人労働者の占めるところでは、学校教育を含めて多文化教育が盛んである。今後は、イギリスの先進的な調査をもっと綿密に行い、多民族化の進行しつつある我が国の教育にいかし、真の意味での生涯学習の実現に役立てていく必要があるだろう。
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