研究概要 |
本研究は,教室文化の着眼を,日米授業比較に,教室環境の着眼を,学習者の感覚や身体状況に置き,授業の様相を,「社会・文化」と「身体的自然性」に依拠しながら考察した。 日米授業比較では,研究に客現性をもたせるために,分析者の複数化と分析平法の多様化をはかった。すなわち,専門を異にする教師の観察結果をふまえ,それを,観察者の主観と,コンピュ-タによる時系列分析とによって,授業の特微の違いを明らかにした.得られた知見は次のようである ア.日米の授業の相異性は,授業に「演劇性」を付与して考えられるかどうかに存在する イ.日米の授業の相異性は,授業を講成する教師の時間異識や,座席表,生徒がすわる机の配置,それによって規定されるコミュニケ-ションのあり方,授業における指導者の視線による授業の場の統一の程度さらには,その視線及び視野の広さの違いに存在する また,感覚や身体条件の違いが,授業にどのような影響を与えるのかを調べるために,日米授業比較で用いた同じ題材による授業を,盲学校聾学校,肢体不自由児学校で行い,その結果を分析し,考察を加えた. 得られた知見は,次のようである ア.盲学校と聾学校では,授業におけるコミュニケ-ションのあり方が大きく異なり,特に,発問・応答のリズムが相異が顕著である。盲学校の場合のほうが,聾学校よりも,思考している時間が長く,生徒の集中力も高い. イ.日本の授業の特微である「練り上げ」が,盲・聾・養護学校ではほとんどみられない. 文化的相異性と身体的相異性との関連把握が今後の課題となる。
|