前年度の授業実践の分析を意味あるものとし、概念としての教室文化をより精密にとらえるために、改めて、算数・数学教育の諸相を社会・文化とかかわらせて根源的な考察を試みた。 1つには 数学的なものの見方・考え方を支える文化的要素を特定するために 日米共同研究(三輪辰郎)と日仏共同研究(岡本光司)からいくつかの知見を得た。 2つめは 文化という視点をもって数学教育のあり方を考えることの意義を確忍した。 具体的には Steveson・StiegleのLenning GapとBishopのEnculturation から意義を考察するための視点を得た すなわち、米国で問題になり 克服しなければならない課題 例えば個別指導のあり方や、教員の勤務スタイルなどが 日本では 積極的にとり入れるべき年柄となっていることがわかり、米国の理論や実践を参考にするときには 日米のこの逆の関係に留意する必要があることが明確化された。また、英国での理論・実践研究からは investigationという活動が 今般の改訂学習指導要領で強調されている課題学習の実践に役立つことが確認できた。 3つめは 欧米におけるコミュニケーションと日本の授業におけるコミュニケーションとの質的違いが、教室文化という視点を通してより明確になった。欧米の授業におけるコミュニケーションには 対立と批判があるのに、 日本では、そうしたコミュニケーションは現出しない。日本の場合はみんなの意見を重ねていって一体成をつくり出す感じで いわゆる「練り上げ」の授業が行われている。 4つめは これまで日本の授業を支配していた教室文化は 農民文化によって支えられていたのではないかということがわかった。
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