日本の村落社会における女性司祭者の存在については、修験道などにおける、いわゆる女人禁制という考え方が絶対的なイメ-ジをもって理解されてきために、その存在自体が表立った研究の対象として論じられるに至っていない。とくに、集落神社レベルの祭祀をめぐる女性の積極的な関与についての究明はなむさらであった。 本研究においては、これまで資料の収集を実施してきた東北地方ならびに瀬戸内地方における女性祠職の分布と存在の実態を窺い得る資料を継続して収集するとともに、その分析を行い始めたところである。また、これまで女性司祭者の典型的な事例の一つとされながらも、充分な資料が提示されてこなかった茨城県鹿島神宮の物忌職についても、これを補完する新たな資料の発堀によって、その実態がしだいに明らかになりつつある。 今後、平成3年度において収集した資料につき、4年度にこれを分析することで、我が国における半ば公的存在であった女性司祭者に関する一面的ともいえる理解を否定し、概括的ながらもその実態把握を行うことができるものと見込まれる。
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