本研究は、地方公営企業への付加価値指標導入の可能性を探求することを目的として、通常の校費では実施が困難なヒアリング調査を中心に行なってきた。ヒアリング調査の中でわが国において民間企業では付加価値指標をどのように利用しているかが問題となってきた。しかしながら近年、付加価値指標が具体的にどのように利用されているかについては十分に調査されていないことがわかった。そのたろ地方公営企業に付加価値指標を導入する可能性を探るためには、付加価値指標を利用している民間企業の実態調査を改めて実施し、そこでの問題点を整理する必要性が痛感された。 したがって今回の研究では地方公営企業に加えて民間企業のヒアリング調査をも実施してきた。関西生産性本部の協力を得て、これまで付加価値指標を利用してきた会社や過去にラッカ-・プラン(付加価値を成果配分に利用する経営手法)などを導入したことがある会社(一部上場企業)を訪問し、付加価値経営について調査を行なった。その結果、なんらかの付加価値指標を導入している会社のうちで現在もなお利用している企業には、全社および部門別の業績評価の指標としている京セラ、オムロン、橋梁の受注の可否を決定する重要な指標として考慮している日本橋梁、間接部門の生産性の測定に利用されている松下電工、成果配分で利用している東洋アルミなどが存在することがわかった。また堀場製作所などはかつて成果配分に付加価値指標を使用していたものの最近では利用していないことも判明した。さらに現実に利用されている付加価値概念は、業績指標として利用される場合、ほとんど限界利益ないし貢献利益と同一のものであることも明らかになった。 今回の研究においては、従来の文献を中心とする研究活動では得られなかった現実からの問題提起と研究上の刺激を与えられた。今後の研究に活用させていきたい。
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