平成3年度に本研究課題と関連するテ-マについて学術雑誌に発表投稿した論文は11にあげる4編である。以下順を追って概説する。第一論文は本研究課題の成果を盛り込むなど部分的な修正を経て出版された。初期値として与えたエルミ-トの行列の固有値からなる対角行列を安定な平衡点とする3次の非線形性をもつラックス型の力学系を発見している。第二論文は線形計画問題の多項式時間の点内アルゴリズムとして著名なカ-マ-カ-法を連続化した非線形常微分方程式が第一論文の力学系のある種の拡張に含まれる事、すなわち可積分系と位置づけられる事を明らかにした。同時に、この方程式はハミルトン構造を持つ勾配系であると結論している。これは可積分系の応用解析による数理計画法研究の基礎を与える成果である。線形計画問題に古典力学のルジャンドル変換が現われるが、類似の構造が確率分布族の微分幾何学(いわゆる情報幾何学)にも存在する事が知られいるが、第三論文では、正規分布と多項分布のなすリ-マン多様体の勾配系を考察し、ともに完全積分可能なハミルトン方程式である事を証明している。この著しい事実の数学的統計学的意味は未だ解明されてない。第四論文では種々の連続離散の確率分布族のなすリ-マン多様体上の勾配方程式系が多様体の双対座標を用いて線形化できる事を示している。これにより勾配系の解軌道は平衡点に指数関数的に収束する事がわかる。応用として同様な定式化によりロ-ゼンブロックの非線形計画問題を解く勾配系が得られている。 以上の結果と関連する話題は2つの国際会議、6大学・学会・研究会での構演において発表された。また、研究の進展にあたって計算機実験の他9大学・研究機関からのべ12名の研究者を招いて専門的知識の提供を受け研究情報交換を行った。以上の研究活動の一部に対する本科研究費補助金からの援助に感謝する。
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