研究概要 |
ストレィンジ物質系について,有限系の問題と無限系の問題の関係を理論的に明らかにするという目的から第一に取り組んだのは,ストレイジクォ-ク系の飽和性である。大要以下の成果を論文として発表した。ハドロン多体系の真の基底状態が原子核ではなくストレィンジクォ-ク物質(SQM)であるとのE.Wittenによる指摘の真偽を確かめるため,二つの相補的模型を用いて,S=ーAのクォ-ク系についてエネルギ-E/Aのバリオン数Aへの依存性を調べた。構成子模型を用いた研究では,S閉殻を単位とするクラスタ-(A=6)の集合をとり,原子核のアルファクラスタ-模型との対比を行った。バッグ模型を用いた研究では,今までなされていなかった1グルオン交換を有限系(A>6)で相対論的に採り入れた。これらの研究によれば,A>6を超えてもE/AはAと共に増大し,Aが大きくなったときストレィンジ物質系が核子系よりエネルギ-が下がる兆候はない。有限の多クォ-ク系の研究から,Wittenの指摘した可能性はありそうにない点を明示した点に意義がある。今後より大きい系を扱い,この結論を確かにする方向で取り組みを始めている。 中間子自由度によるストレィンジ物質としては,以前からK中間子凝縮の可能性が指摘されていたが,理論的に不明確な点があった。こゝでは,弱い相互作用がストレィンジネス非保存の過程を通じ,化学平衝条件を与える点を理論にとり入れ,從来の理論の欠点を除去した。この理論により,KNシグマ頂を通じてKNS波相互作用の引力的効果により,中性子物質ではK^-凝縮が3P。(Poは核密度)辺りから,対象核物質ではK^+K^-対凝縮が4P。辺りから発現することを示した。 その他,中性子星物質の高密度領域での状態方程式と超新星爆発による中性子星形成の問題をπ中間子凝縮の視点から研究し,分析した。
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