角運動量理論、即ち、ウィグナー・ラカー代数としての回転群について一大拡張をした。発展させた数学的技法は量子群代数に関するものである。物理空間は、通常の可換な空間を拡張したもので、量子空間と呼ばれている非可換空間を採った。 著しい成果は、全ての物理量と関係式が擬共変性を満足するよう理論を構成できたことである。これは、全ての観測量(遷移確率)は量子空間での或種の一次変換(擬一次変換)に不変という要請に沿うものである。擬共変性により、全ての量を一般化された意味のスカラー、ベクトル、あるいはテンソルとして規定することができる。ウイグナーとエッカートによる基本的定理を、一般化されたウイグナー・エッカート定理として捉えた。また、一般化単位テンソルという概念にも到着した。 回転群表現論で重要である種々の関数、例えばクレブシュ・ゴルドン係数 ラカー係数(一般的にn-jシンボル)の拡張形を研究し、その拡張形相互の関係式を確立した。これらの関数がフエイス型とヴァテックス型のYang-Baxter関係式を構成する一基本関数系をなすことを指摘した。 ついで、この共変形式のもとで、フェルミオン・ボソンの生成消滅演算子の自然な拡張を見いだしそれらの交換関係を規定した。一般化スピノールと生成消滅演算子を対応させるのに何通りもある。その一つとしてBCS・ボゴリューボフの定式化の量子群的拡張をした。この拡張を用いて、Symplecton代数で知られる角運動量代数を、量子論的拡張した。 さらに、この共変理論をSU_q(n)の理論に拡張した。ヤング図表についての新しい拡張も見いだしている。
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