1.液体窒素、水、あるいはエタノールの液滴を、沸点よりはるかに高い水平な板の上に置き、それに生じる自励振動を観察し、振動数を測定した。液体窒素については、200℃まで熱した電気炉の中、あるいは窒素の蒸気で-90℃まで冷やした箱の中に置いた。水、あるいはエテノールについては、300-400℃の板に置いた。いずれの場合も、蒸発してなくなるまでに、平面形が正n角形になる規則的な振動が現れた。しかし、nがいくつになるかというモードの選択には、物質の種類や周囲温度により微妙な差が観察された。 2.薄い層内で化学反応を伴う液体界面については、界面活性剤を含む水層とヨードイオンを含む油層の界面に発生する対流運動、いわゆるマランゴーニ対流について理論的に解明した。両側の流体についてはストークス方程式と拡散方程式、界面については界面張力、界面活性剤の吸着、等を考えた境界条件を設定し、線形安定理論を展開した。その結果、水平方向の波長のすべての値で対流は不安定だが、ある値の所で最も不安定になること、その波長は関係する種々のパラメーターに依存することがわかった。 3.水と等しい密度を持つオルトトルイジンという有機液体の液滴を、水の中に中立浮遊させ、外から加振器によって刺激を与え、現れる振動モードと共鳴振動数を測定した。液滴表面の1箇所を刺激すると、軸対称なモードが現れたが、2箇所を刺激すると、正多面体になるモードが現れやすいことがわかった。それらの共鳴振動数は、代表者らによって導かれた理論値とよく一致した。 以上から、非平衡液体界面におけるパターン形成の物理的な機構が、かなり明らかになった。一方、強い過熱状態の液滴の振動で、モード選択の理論的な機構はまだ未解決である。
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