人工的に創製される新たな構造を示す表面及び界面の電子状態、とりわけフェルミ準位付近の局所電子密度の詳細な研究を行うための真空紫外光源の製作を進め、放電部とタ-ボ分子ポンプを用いた希ガスの差動排気部については、排気部分の一部と放電を制御する電源を除いてほぼ完成した。主要な設備備品として購入したタ-ボ分子ポンプによって、希ガスの主排気システムへの流入を差動排気によって効率よく抑えるとともに、真空紫外光源及び排気系もクリ-ンに維持できることになった。光源に関しては、少なくとも市販されているものと同等か、それ以上の強度を取り出せるものを開発することができた。また、差動排気部分をコンパクトにするとともに、中心軸が一致するような設計とし、光の強度の減少を最小限にとどめるように工夫した。さらに、人工2次元格子表面の電子状態の測定において、表面の汚染を引き起こさないように、放電に用いる希ガスの精製を可能にする導入システムを新たに設け、差動排気部分からの油蒸気の進入を防ぐためのトラップを挿入した。一方、測定の対象となる人工2次元格子であるRh(100)表面にできるfcc構造の鉄薄膜の研究では、鉄薄膜の構造は表面の鉄の厚みと温度によってfcc構造が再配列した新たな周期構造になることやbcc構造に移行していくことが明らかになった。今後、これら構造の異なる表面の電子状態を角度分解型の光電子分光法で測定し、表面の反応性とフェルミ準位近傍の電子状態との関連を調べることが大いに期待できる。
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