鋳型として下地の基盤にf.c.c.構造のRh(001)単結晶表面を用い、エピタキシャル成長によって人工的に創製されるf.c.c.構造の鉄薄膜では、水素の吸着状態や不飽和炭化水素との反応における中間体の挙動が一層ごとに変化することが明らかになった。原子や分子と表面原子との相互作用において重要となるフェルミ準位近傍の電子状態密度を調べ、表面の活性化を明らかにするために、真空紫外光の光源を製作し光電子分光法を行った。平成3年度未完成であった差動排気部の一部と放電を制御する電源部の製作を完了させた後、真空紫外光源から長時間安定して光の放出が起こることを確認した。また、放電中の真空装置内のヘリウム圧はほぼ計算値と一致しており計画どうりの性能を達成することができた。そこで、Rh(001)単結晶表面の光電子分光を測定し、フェルミ準位以下3eVまでに鋭いdバンドの電子状態を観測した。f.c.c.構造の鉄薄膜については、その格子間隔が数%変化するのに対応して、フェルミ準位近傍の表面電子状態密度が大きく異なることが理論的に予想され、現在注目されている人工2次元格子である。Rh(001)単結晶表面にできるf.c.c.構造の鉄薄膜について一層ごとに変化する電子状態を調べた結果、表面に対して垂直方向に飛び出す電子のエネルギー分析では、一層目までにロジウムの電子状態は減少し、鉄の層の厚みとともに次第に電子状態の構造がブロードになることがわかった。今後、表面から飛び出す電子のエネルギー分析を角度分解型で測定することによって、表面および界面電子状態の詳細な研究を引き続き実施する計画である。
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