研究概要 |
平成3年度は、励起一重項状態の亜鉛原子(4^1P_1)のキセノンによる項間交差過程についての研究を行った。まず、項間交差の速度定数をパルス的に生成させた一重項状態からの発光強度と項間交差によって生成した三重項状態からの発光強度の比を測定することによって決定した。また、三重項状態の全角運動量量子数の初期分布をポンプ-プロ-ブ法によって決定した。さらに、励起光の波長を少し共鳴条件からずらした条件下でも、全角運動量量子数の初期分布を測定した。実験の結果、共鳴条件下で4^3P_<2,1,0>状態が生成する過程の断面積はそれぞれ3.4x10^<ー16>cm^2、0.4x10^<ー16>cm^2、および0.01x10^<ー16>cm^2以下と求まった。つまり、4^1P_1状態からは4^3P_2状態が主に生成し、4^3P_1状態や4^3P_0状態はあまり生成しない。これらの状態の生成比は非共鳴条件下でもほとんど変化しなかった。これらの結果から、4^1P_1状態に相関するC^1II_1状態と4^3P_2状態に相関するc^3Σ_1状態のポテンシャル曲線が交差するのに対して、C^1II_1状態と4^3P_1状態や4^3P_O相関する状態のポテンシャル曲線が交差しないことが示唆される。10%ほど4^3P_1状態が初期に生成し、かつこの生成比が励起光の波長に依存していないことは、c^3Σ_1状態からB^3II_1状態への遷移が励起状態のZnX錯体の解離途中で起こっているためであると考えられる。これらの結果は分光学的に決定されたポテンシャルを仮定した量子力学的緊密結合法による計算結果とよい一致を示した。また、量子力学的計算の結果、一重項状態から三重項状態への遷移はそのほとんどがC^1II_1状態とc^3Σ_1状態のポテンシャル曲線の交点で起こっていることが示された。
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