本課題では、非線形特性こそが、スカラー的な化学エネルギーとベクトル過程を結合され得るものであることに着目して、実験・理論両面から研究を進めた。 (1)化学的振動反応系の相互作用(引き込み同調現象)の研究 BZ反応と類似の実験系や、電極反応の振動系など巨視的なリズムの発生する実験系を取り上げ、反応系同士の相互作用を調べた。相互作用する振動系のお互いの固有振動数が余り大きく違わない場合には、2つの振動子は結合して、「同一位相」から「反対位相」の2つのモードが出現することを明らかにした。さらに、3つの反応系が相互作用すると、「全てが同一位相」になる場合と「互いに120度位相の異なった3相モード」の2つが出現することを実際の実験で確認した。また、各々のモードの安定性を理論・実験の両面より詳しく解析し、振動子系の“フラストレーション"が多重安定性を引き起こすのに、決定的に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 (2)膜や界面の自発的運動の研究 界面張力の周期的な変動を起こす実験系に特に注目して、系統的な実験を行った。特に、方向を制御した界面運動を発生させる実験系を研究することに重点を置いた。具体的には、キラルなローターを用いることにより、ランダムな界面運動を一方向への運動へと変換することが可能であることを、実験的に明らかにした。これとは別に、BZ反応で酸化還元電位の振動に伴い、気水界面の張力が周期的に変化することを新たに見い出した。これらの研究成果は化学エネルギーが直接機械的エネルギーに変換できることを示したものとして興味深い。
|