研究課題/領域番号 |
03804034
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
野平 博之 埼玉大学, 工学部, 教授 (50008819)
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研究分担者 |
宮下 晃 埼玉大学, 工学部, 助教授 (90132729)
町口 孝久 埼玉大学, 教養部, 教授 (00008864)
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キーワード | 軌道相の最小変化 / Woodward-Hoffmann理論 / cis-trans異性化反応 / 電子環状反応 / 相関図 / フロンティア軌道 / トロポン |
研究概要 |
軌道相の最小変化の概念における分子軌道の位相の保存の様子を定量的に表す係数として、保存係数(N)という概念を導入した。この保存係数(N)は、化学反応A→Bの単分子反応においてA、Bの分子軌道の準位をそれぞれi、jとすると、N_<ij>=〈ψ_j^B|Q|ψ_i^A〉と定義される。ここでQはA→Bの分子の核の変位を表す変換行列であり、このQを適当に選ぶことにより各種反応を取り扱うことができる。この保存係数の正負に物理的な意味はなくその絶対値が大きい程軌道相はその素反応においてよく保存されていることを表す。さらに、得られた保存係数の絶対値の2乗の積をとり、全保存係数(φ)を定義する。すなわち、φ_<ij>‥‥_<kl>=|N_<ij>|^2‥‥|N_<kl>|^2。反応の軌道相関図はこの全保存係数が最大になるように作成すればよい。 作成された軌道相関図を解析することにより、対象とする素反応を解析することができる。現在までに本方法による解析方法が確立された素反応の一つが、オレフィンのcis-trans異性化反応である。この保存係数を使う方法の利点は、Woodward-Hoffmann理論では取り扱うことが困難な全く対称性を持たないような分子に対しても全く同様な手続きにより軌道相関図を作成し解析を行えることである。また、電子環状反応についても本方法を適用でき、軌道相関図を作成し反応の選択則(反応許容、反応禁制)を予測できる。ほとんどの場合選択則はWoodward-Hoffmann理論と同じであるが、置換デュワーベンゼンの熱開裂反応などの場合には異なる結果を与え、その際は本方法のほうがより正しいと考えられる相関図を作成することができる。 一方、πー電子系分子に関する実験では、トロポン系分子の性質やその反応性について検討を行い、その反応機構に関して分子軌道法による解析を行った。
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