研究概要 |
本年度は、常圧条件下におけるアルケンの固相水素化について詳細に検討した。すなわち、高温水素処理されたNi微粉とアルケン(マレイン酸ジナトリウムまたはフマル酸ジナトリウム)粉末の混合物を水素(常圧)存在下に振とう撹拌しC=C結合の固相素化を試みた(水素圧;1.0kg/cm^2,反応温度;30℃)。生成物の分析方法は次の通りである;反応混合物からの温水による水溶性物質の抽出→抽出物のメチルエステルへの誘導→GLC分析。その結果以上の現象が観察された。 (1)マレイン酸ジナトリウムを基質として用いた場合には、コハク酸ジナトリウムの水素化とフマル酸ジナトリウムへの異性化がおこった。水素化、異性化はNi微粉1.0gにつきそれぞれ約0.4mmol、約0.1mmol進行した段階で停止した。反応系に水素ガスが存在しない場合にも同程度の水素化・異性化がおこった。 (2)フマル酸ジナトリウムを基質として用いた場合には、水素化だけおこった(約0.4mmol/g Ni)。反応物の抽出を冷水でおこなうと得られるコハク酸ジナトリウムの量は減少した(約0.2mmol/g Ni)。 以上の現象は次のことを示唆する。 (1)本研究の条件下では、Ni微粉は水素化触媒としてではなく水素化剤として働く。 (2)少なくとも一部の水素化は抽出段階(液相反応)でおこる。 現在、Ni微粉を用いるC=Oの固相水素化(基質:ケト酸ナトリウム塩など)について検討中である。
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