本年度は、主に固相水素化生成物の分析法について検討した。昨年度の実績報告書に述べたように固相水素化生成物の抽出階段でフマル酸ジナトリウムの水素化(液相反応)が進行する。それ故、生成物の脱イオン水による抽出→エステル化→GLC分析というこれまでの方法で求められた水素化率は固相水素化と液相水素化の結果の合計である。このため固相水素化生成物の分析法を確立することが固相水素化の研究を続ける上で最重要課題となる。分析法を検討するにあたり、固相反応としては、前年度に引き続きNi微粉によるフマル酸ジナトリウムの常圧水素化(30℃)を選んだ。抽出段階における液相反応を抑制するために、反応後Ni微粉を各種触媒毒のメタノール溶液で処理した。その後、水溶性物質(フマル酸ジナトリウム、コハク酸ジナトリウムなど)を脱イオン水または触媒毒水溶液で抽出した。その結果、コハク酸ジナトリウムの生成量が触媒毒で処理しない場合と比較して約1/10に減少した(0.4mmol/g Ni→0.04mmol-g Ni)。 このことから、これまでの生成物分析法で求められたコハク酸ジナトリウムの生成量の90%以上は液相水素化の結果であると結論された。 次にフマル酸ジナトリウムのNi微粒による固相水素化を常圧・高温条件下(60℃)、高圧・高温条件下(100kg/cm^2、60または100℃)で試みたが、再現性よく高い収率でコハク酸ジナトリウムを得ることにはいまだ成功していない。 本年度の研究結果に基づき、Ni微粉による固相水素化の条件および他種金属触媒による固相水素化について検討する予定である。
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