研究概要 |
1.液液界面(油水界面)イオン移動において、1:1錯体と1:2(金属イオン:リガンド)からなる二つの錯体種が油相に存在する場合の油水界面を横切るイオンの促進移動の電流-電圧曲線を理論的に解析し、1:1、1:2錯体の安定度定数を決める方法を提案した。2.octaethylene glycolmonododecyl ether(C12E8)等の非環状ポリエーテル、およびクラウンエーテルによるアルカリおよびアルカリ土類金属イオンのニトロベンゼン-水界面における促進イオンを移動電気化学的に測定し、リガンドとこれらイオンとの1:1,1:2錯体の安定度定数を定めるとともに、3イオンの促進移動におけるそれぞれの錯体種の寄与のダイナミックスを明らかにした。さらに、C12E8について、リガンドの界面吸着のイオン移動への寄与を定量的に解析した。4.また、これまで1:1錯体しか知られていなかった系でも、C12E8等によるLi^+やCa^<2+>のような親水性イオンの促進移動、ジベンゾ18クラウン6(DB18C6)によるBa^<2+>の促進移動では、電流への1:2(イオン:リガンド)錯体の寄与が無視できないこと等を明らかにした。 本研究から、液液界面における疎水性リガンド(イオノフォア)によるイオンの促進移動では、錯形成反応がきわめて速い場合でも、水相中のイオンの初期濃度と油相中のリガンドの初期濃度との比によって界面を横切ってイオンを運ぶ錯体種が異なり、しかも、イオン移動に伴う界面近傍のイオン、リガンド両者の濃度の時間的変動によって、界面近傍で生成する錯体種が変動することが明らかになった。これは、溶媒抽出等でも実際に生じていると考えられ、効率的な抽出条件を決める際に考慮すベき一つのファクターである。
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