マイクロ電極を含む特別なフロ-電解セルを製作し、対物レンズを用いてレ-ザ-光のスポットを電極上に断続的に照射した。サイクリックボルタンメトリ-や定電位電解の電気化学的操作におけるレ-ザ-光誘起電流をロック・イン増幅器あるいはオッシロスコ-プを用いて観測した。今までに検討した電極反応は(1)フェロシアン化物イオンのフェリシアン化物イオンへの酸化反応(2)鉄(II)イオンの鉄(III)イオンへの酸化反応(3)アスコルビン酸の酸化反応などである。(1)においては半波電位付近で酸化電流の増加がみられ、レ-ザ-光照射により反応が促進することが確かめられた。これは反応のエントロピ-変化から予想される結果と合致し、レ-ザ-光照射による電極近傍の温度上昇に起因する。(2)においては半波電位付近で酸化電流の減少がみられ、照射により反応が抑制された。これもエントロピ-変化から予想される結果と合致し、照射による温度上昇に起因すると考えられる。(1)、(2)におけるロック・イン増幅器によるボルタモグラムは半波電位において各々極大、極小を示す形となりその波高より各々のイオンの定量が可能であった。(3)におけるレ-ザ-誘起電流は複雑な挙動を示したが、反応中間体の光化学反応が生じている可能性が示唆される結果を得た。他に支持電解質のみの溶液における電気二重層の温度依在性によると考えられる電流変化やレ-ザ-光波長に吸収をもつ鉄錯体の電極反応のレ-ザ-光照射依在性を検討している。以上、微小なスポットに集光したレ-ザ-光を直径数〜数十μmのマイクロ電極に照射することにより高い光子密度を達成し、この特殊な条件下での電気化学反応がどのように変化するのかを検討した。その結果、比較的入手しやすい低出力の可視レ-ザ-光によっても電子移動および物質輸送過程に対して充分に測定しえる温度効果を確かめることができた。今後、さらに特徴的な電極反応を見い出してゆきたい。
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