静岡県猪頭火山灰土、愛知県段戸山褐色森林土、及び東京湾海底底質よりアルカリで抽出したフミン酸について、表面膜圧力計を用いて、気液界面におけるフミン酸単分子膜の表面圧-面積曲線を得た。底質より抽出したフミン酸については、限外濾過法により分子量分画を行ない、分子サイズ別の表面圧-面積曲線を得た。得られた曲線から底質フミン酸の極限面積(得られた曲線の直線部分を表面圧ゼロに外挿した点の面積に相当する)を求めると、分子量の増大につれて、極限面積は減少した。この極限面積から、フミン酸分子サイズの一次元方向の長さを計算すると、3.1-8.7nmとなって、炭素数に換算して、23-67個の範囲になり、分子量の大きいフミン酸の方が長いという妥当な結果が得られた。 そして、この数値をフミン酸分子を球とみての半径と考えると、体積が分子量に比して過大になりすぎてしまうため、フミン酸分子の形状としては、球状というよりも棒状であることが強く示唆された。褐色森林土及び火山灰土のフミン酸については、その分子長はそれぞれ3.8、12.1nmとなって、灰素数に換算すると、それぞれ29個、93個となった。この結果から、火山灰土フミン酸の方が褐色森林土のそれに比べて、分子サイズはかなり大きいことが明らかにされた。 これまで、フミン酸の大きさについては、モデルとなるものが存在しないこともあって、相対的にしか知りえない場合が多かったが、本研究にように、フミン酸分子サイズを一次元方向のみとはいえ、具体的な数値により、その絶対値を表した例はきわめて希少である。今後は、海成、陸成その他各種フミン酸について、本法の表面圧-面積曲線により、その分子サイズの大きさの絶対値直接測定を継続していく。これにより、フミン酸をはじめとするフミン物質の化学的キャラクタリゼーションをさらに推進していきたいと考えている。
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