本研究の、初年度において行った研究の概要は、以下の通りである。 [I]超音速分子流生成用ノズルの検討 キャリヤ-ガス中に微量混入した有機化合物をノズルから噴出させ、1〜20[eV]の運動エネルギ-まで加速させるのに適するノズルの探索を行った。ノズルの材質として(A)パイレックス、(B)ルビ-(時計穴石)(C)セラミックスについて各種孔径及び厚みのものについて検討した。その結果、(A)パイレックス製ノズルは、実験目的を満足するものが得られない。(B)ルビ-、(C)セラミックス製ノズルでは目的に適う運動エネルギ-が得られ、ルビ-では50ー80、セラミックスでは〜150[μm]の孔径が適している。ガス流速に関してはセラミックス製が適しているが、ルビ-製は時計穴石により安価に自製できる為以後これを用いた。 [II]正イオン生成効率の運動エネルギ-効果の測定 前述のルビ-穴石を用いて、固体表面レニウム(Re)及びニッケル(Ni)、有機化合物ピペリジン(C_5H_<11>N)及びトルエン(C_7H_8)について、キャリヤ-ガス水素(H_2)を用いて、イオン生成効率の測定を行った。しきい値3〜4[eV]以上でイオン生成効率が、運動エネルギ-について指数関数的に増大した。イオン生成効率は、最大〜10^<ー4>に達した。 また固体表面から生成するバックグランドイオン電流を測定した。 [III]差働排気真空系の建設 固体表面で生成した正イオンを、真空分析計により質量分析するための差働排気真空系を組み上げている。現在の所、約90%完成している。 まとめとして、[II]で述べたように、固体表面からの正イオン生成に対する顕著な運動エネルギ-効果を観測することが出きた。特にトルエンの正イオンを生成・検出したのは大きい成果で、目的とするガスクロマトグラフィ-検出器への本イオン化法の応用に明るい希望がもてる。
|