研究概要 |
これまで得られた知見は、以下のようである。 1.集光性クロロフィルを欠いたコア複合体のWOCの光活性化 47kDa/43kDa/D1/D2/チトクロムb559それにpsb Ipsb Kなどからなるコア複合体のWOCの光活性化に成功した(Tamura et al.1991)。この光活性化の特徴として、a)光活性化の至適pHが5.3とかなり酸性側に偏っている。但し、形成されたWOCの活性の至適pHは6.5と正常である、b/光活性化の際に生じる中間体の生体・分解速度が著しく遅くなっている、c)Ca^<2+>やMn^<2+>の親和性が悪くなっている。ことなどが挙げられた。 2.徐草剤3ー(3,4-ジクロロフェニル)ー1,1ージメチル尿素(DCMU)の光化学系II酸化側に対する特異的阻害 DCMUは、一般に、光化学系IIの還元側のQ_AからQ_Bへの電子伝達を阻害する。我々は、見かけの解離定数は10μMと還元側のそれと比べかなり低いものの光化学系IIの酸化側にも結合部位があることを示唆した(Kamachi et al.1992)。その際、阻害部位は、WOCのマンガン配位(結合)部位近傍にあり、弱光による光阻害やマンガン配位を阻害する化学修飾剤によって影響される。 3.マンガン配位子としてのカルボキシル基の可能性 水溶性カルボジイミド(EDC)を用いたカルボキシル基の化学修飾によって光化学系IIの電子伝達活性は余り影響を受けなかったが、光活性化は著しく抑えられた。この修飾は、二価の陽イオンによって特異的に保護された。また、アミノ酸分析の結果、47kDaやD2タンパク質に比べて、D1タンパク質が特異的に修飾されていることが分かった。これらのことから、D1タンパク質のカルボキシル基がマンガンの配位子として機能していることが示唆された。 4.ヒドロキシルアミン処理小麦生葉の光失活と光活性化 ヒドロキシルアミン処理によって酸素発生活性が失われた小麦生葉に、弱光照射(<100μE/m^2・s)すると1〜2時間で顕著な光失活とそれに続く光活性化が観察される。この時、マンガン配位能や光活性化能をみると、光失活にともなうこれらの減少とその後の回復がみられた。さらに、光化学系IIの蛋白合成を見ると、D1/D2タンパク質がおもに合成され、チトクロムb559/47kDaは殆ど合成されなかった。ヒドロキシルアミン未処理葉では全てのタンパク質が合成されているので、この差異がどこからくるのか興味深い。
|