研究概要 |
2年間の研究で得られた知見は、以下のようである。 1.集光性クロロフィルを欠いたコア複合体のWOCの光活性化 47kDa/43kDa/D1/D2/チトクロムb559などからなるコア複合体のWOCの光活性化に成功した。この光活性化の特徴として、a)光活性化の至適pHが5.3とかなり酸性側に偏っている。b)光活性化の際に生じる中間体の生成・分解速度が著しく遅くなっている、c)Ca^<2+>やMn^<2+>の親和性が低下した、ことなどが挙げられる。 2.除草剤3-(3,4-(3,4-ジクロロフェニル)-1、1-ジメチル尿素(DCMU)の光化学系II酸化側に対する特異的阻害 DCMUの結合部位として、光化学系IIの還元側以外に、10μMと還元側のそれと比べかなり高い解離定数をもつ結合部位が酸化側に存在することを示唆した。その際、阻害部位は、WOCのマンガン配位(結合)部位近傍にあり、弱光による光阻害やマンガン配位を阻害する化学修飾剤によって影響された。 3.ヒビロキシルアミン処理小麦生葉の光失活と光活性化 ヒドロキシルアミン処理によって酸素発生活性が失われた小麦生葉のマンガン配位能や光活性化能は、弱光の連続照射により、光失活にともなって低下しその後回復した。その時、D1/D2タンパク質が主に合成され、チトクロムb559/47kDaは殆ど合成されなかった。ヒドロキシルアミン未処理葉では全てのタンパク質が合成されているので、この差異がどんな原因によるのか興味深い。 4WOCの光活性化に対するカルボキシル基化学修飾剤の効果 水溶性カルボジイミドであるEDCでマンガンを欠いた光化学系II標品を化学修飾すると、その修飾はD1タンパク質に特異的に起こっており、光活性化能が著しく低下した。この時、系IIの電子伝達活性は殆ど影響を受けていなかった。これらの結果から、マンガンは少なくともD1タンパク質の酸性アミノ酸残基に配位していると考えられる。
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