アポプラスト中に存在するキシログルカン転移酵素の単離及び生理機能の解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03804055
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 西谷 和彦 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (60164555)
• キーワード: エンド型キシログルカン転移酵素 / 細胞壁 / キシログルカン / つなぎ換え反応 / 細胞生長 / 多糖類 / 植物 / 新規酵素

研究概要

(1)エンド型キシログルカン転移酵素活性の測定法の確立
キシログルカン(以下XGと略す)鎖間でエンド型の転移反応を触媒する酵素はこれまで単離、同定されていないので、まず、酵素反応の測定法の確立を目指した。その結果、アルリカ溶液を用いたGPCとPAD検出器からなるHPLCシステムを開発し、XG間でのエンド型転移反応の簡便な定量法の確立に成功した。
(2)エンド型キシログルカン転移酵素の単離
暗所、25℃で6日間生育させたアズき芽生えの上胚軸の上部より1cmの茎切片を調製し、低速遠心分離法によりアポプラスト液を集める操作を繰り返し、約9万本の切片からおよそ30mgのアポプラスト酵素粗標品を得た。上記の活性測定法により活性区をモニタ-しなから、硫安塩析、ConーAセファロ-ス6Bによるアフィニティ-クロマトグラフィ-、TSKge12000SWによるゲルクロマトグラフィ-、MonoーSによる陽イオン交換クロマトグラフィ-により精製を進め、最終的にSDSーPAGEで単一バンドを与える糖タンパク質(分子量33万)としてエンド型キシログルカン転移酵素の単離に成功した。
(3)新規酵素、エンド型キシログルカン転移酵素の反応機構と生理機能
単離した酵素の反応特異性について解析するため、XGの末端をピリジルアミノ基で蛍光標識した基質(XGーPA)を合成した。その結果、この新規酵素はXG鎖をエンド型様式で加水分解した後、分解によって生じた還元末端を他のXG鎖の非還元末端に結合する反応を触媒することが明らかになった。
以上の結果から、この新規酵素は植物細胞壁内でXG鎖の「つなぎ換え反応」を触媒し、細胞壁の高次構造の構築過程においてきわめて重要な役割を演じている酵素であると考えられる。また、細胞壁高分子の構造変化に関する転移酵素として初めて単離された酵素でもある。本酵素の生理機能の解明は植物の細胞成長の仕組みの分子水準の解明につながると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Nishitani,K.and Tominaga,R.: "Endoーxyloglucan transferase,a novel class of glycosyltransferase that catalyzes transfer of a segment of xyloglucan molecule to another molecule" J.Biological Chemistry.
• [文献書誌] Nishitani,K.: "A novel method for detection transglycosylation between xyloglucans" Plant Cell Physiol.
• [文献書誌] Nishitani,K and Nevins,D.J.: "Glucuronoxylan xylanohydrolase,unique xylanase with the requirement for appendant glucuronosyl units" J.Biological Chemistry. 226. 6539-6543 (1991)
• [文献書誌] Nishitani,K.and Tominaga,T.: "In vitro molecular weight increase in xyloglucans by an apoplastic enzyme preparation from epicotyl of Vigna angularis" Physiologia Plantarum. 82. 490-497 (1991)
• [文献書誌] Nishitani,K.and Nevins,D.J.: "An enzymic probe for the resolution of glucuronosylan and glucuronoarabinoxylan structure" Food Hydrocolloids. 5. 197-207 (1991)
• [文献書誌] 増田 芳雄編,西谷他著: "生物化学実験法シリ-ズ 植物ホルモン研究法" 学会出版センタ-, 295 (1991)
• [文献書誌] 西谷 和彦他共著: "植物ホルモン入門" オ-ム社, 190