研究概要 |
キウリ胚軸表皮の気孔の分化パターンの赤色光による制御に関し以下の点について明かにした.1.孔辺細胞の形成に際し,キウリ胚軸表皮における孔辺母細胞形成は,従来言われていたような不等分裂によるのではなく等分裂によって形成されることを孔辺祖母細胞に観察される分裂準備期微小管束(PPB)の形成位置の計測から明かにした.2.赤色光によって誘導される気孔の分化パターンの現象面の詳細な検討を行ない,分化パターンの制御に赤色光が重要な役割を果たしていることを明かにした.これについてはNatureに論文を投稿中である.3.組織培養が非常に困難であったキウリの胚軸表皮の培養が可能となり、気孔分化過程を生きている細胞で観察することが可能となった.しかし、現在の系では外植の時期により,孔辺母細胞の分裂面の決定に支障をきたす。従って、更に培養系を改善する必要があるが,一方,現在の系を用いることにより分裂面の制御機構の解明の手掛かりを期待できると考えられる.4.孔辺細胞の再分裂には二度の赤色光照射とその間の暗期に一定の長さが必要であることが明かとなり,また,再分裂に伴う微小管の動静について,新たな知見が得られた.MTOC(Microtubule Organizing Center)を要として扇状に配向していた微小管は再分裂に先立ち,それぞれの孔辺細胞にふたつのMTOCsが形成されることを示唆する微小管の配向が観察された.このことは赤色光が微小管などの細胞骨格の配向などその働きを制御している可能性を示唆するものとして興味深い.5.赤色光により副細胞の形成が誘導されることを明かにしたが,その際,赤色光照射によってDNAの複製(S期)に先だって核の孔辺細胞側への移動が促進されることが強く示唆された.以上1,3,4,5の点については論文を準備中である.
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