昨年度に引き続き、ジャケツイバラおよびコウホネを研究材料として、花粉外膜のパターン決定機構の解明の研究を遂行した。今年度は特に私の従来の研究で明らかにしてきた原形質膜による花粉外膜の基本的なパターン形成モデルの一般化にむけて検証することを中心とした。さらに、被子植物の各分類群にみられる花粉外膜の多様化の機構を明らかにすることと、初期花粉外膜の内部超微細高次講造の解明を研究の目的とした。これらの植物について、花粉母細胞の減数分裂から成熟花粉にいたる花粉形成過程に見られる小胞子および発達しつつある花粉の表層構造系の変化を超高分解能走査型電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて微細構造のレベルで追跡した。具体的には、野外でこれらの植物をサンプリングし花粉母細胞から成熟花粉にいたる適当な発育段階の雄蕊を光学顕微鏡で確認しながら切断し、小片化した後で、急速凍結固定およびパラホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドにて化学固定した。オスミウム産にて二重固定後、脱水処理し、TF-1型を用いて、凍結割断面を作製し、超高分解能走査型電子顕微鏡S-900にて、初期花粉外膜の内部超微細高次講造および連続的な発育段階に従って花粉外膜のパターンが決定されていく過程を3次元的に解析した。一方、急速凍結固定法は、四分子細胞が厚いカロース層に被われているためにどうしても氷晶ができてしまうと言う技術的問題を解決できなく成功しなかった。 以上の結果、大きな針状突起をもコウホネの花粉の花粉外膜のパターン形成過程において、針状突起は上部表層突起と形成時期が異なっており、針状突起は4分子初期にカロースの中に伸長していくように形成されることが明らかになった。外観的には類似している針状突起にも上部表層突起と相同でないものがあることを示唆している。花粉外膜の層構造の相同性を明らかにしていくのに形成過程の研究が重要である。また、花粉外膜の内部基本構造が繊維状の構造物によって構成されていると言う新しい見解が生まれた。これらの研究成果は、それぞれ国際誌であるAmerican Journal of BotanyとReview of Paleobotany and Palynologyに発表した。
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