研究概要 |
本年度の科学研究費の交付により,以下の成果を得た。 (1)BrdUを取り込ませた精原細胞から精母細胞・精子への分化について:精巣断片と解離された精子形成細胞へのBrdUの取り込みと、取り込んだ細胞の分化程度について、螢光抗体法とHE染色により検討した。その結果、メダカ精巣では、BrdUは培養後15分で精巣断片中の精原細胞ならびに前パキテン期の精母細胞に取り込まれ始め2時間後には精原細胞のシストの50%、精母細胞のシストの20%に取り込みがみられた。2時間BrdUを取り込ませた後、BrdUを含まない培養液中で培養を続けた結果、5〜8日後の精細胞にBrdUの取り込みがみられたが、精子には取り込みが見られていない。現在,精母細胞へのBrdUの取り込みや実験系の改良を試みている。 (2)培養下での機能的精子形成について:成熟精子はLー15培養液中では5日目までは受精能を持つが、7日目では完全にそれを失う。精巣断片を培養して15〜20日目、解離された精母細胞を培養して10日目に培養液中に泳いでいる精子を用いて媒精実験を行ったところ、30〜50%以上の受精率・発生率が得られた。この結果は、培養下における機能的精子形成の成功を示すものと考えられる。今後、(1)の実験結果との整合性について、より一層の検討を加える。 (3)プロタミン合成について:AUTーPAGEにより、精巣、成熟精子、精母細胞、精細胞の塩基性タンパク質の分析とその比較検討を行った結果、メダカの成熟精子ではヒストンからプロタミンへの完全な置換はおこらず、共存していること、精母細胞ではプロタミンの合成は行われておらず、精細胞で合成が開始することが明らかになった。現在PCR法により、プロタミン遺伝子解析の準備を進めており、今後プロタミン遺伝子の発現・調節について検討を加えたい。
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