研究概要 |
プラナリアの強い再生能力に着目し、その分子的背景を明らかにする為に以下の事を解明した。1:プラナリアの分裂を阻害するメラトニンは再生を特異的にかつ可逆的に阻害する。類似体であるセロトニン、N-アセチルセロトニン、6-ヒドロキシメラトニンは阻害しない。2:メラトニンによる阻害は目、頭部および尾部の再生を阻害する。3:抗メラトニン抗体によるラジオイムノアッセイにより、メラトニンが頭部に高く、尾部に低い濃度勾配を形成している。4:Nアセチル転移酵素遺伝子をPCR遺伝子増幅法でプラナリアのゲノムDNAに同定した。5:頭部(目)及び耳葉に、カエルロドプシンと免疫学的に類似な蛋白質を確認した。6:頭部再生を阻害する熱安定な蛋白質性の因子を、プラナリアをホモジネートし、硫酸アンモニウム沈澱及び界面活性剤による可溶化と、DEAEカラムクロマトグラフィーにより分画した。この因子は目、及び頭部再生を阻害し、尾部再生は阻害せず、分子量は10,000以上である。7:ストレスに対する対応を担うヒートショック蛋白質(HSP)に着目し、HSP90、HSP70遺伝子の塩基配列を部分的に決定した。HSP90mRNAはプラナリア切断後18-20時間付近で特異的に発現する。8:再生マーカー確立の為に、腺細胞などに特異的なモノクローナル抗体を作成した。9:再生の細胞レベルの解析を目指し、プラナリアの細胞培養を試みた。しかし形質膜が弱く形態維持が困難であった。温和な条件での培養の一方法として、フルオロカーボンの上に培地を乗せ、動物細胞A375を培養した。増殖した細胞の回収にトリプシン処理を必要とせず、膜蛋白質に損傷のない利点があり、細胞膜が弱い細胞の培養に有効である。この研究は、日本工業新聞に掲載された。
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