研究概要 |
1.テクトニックメランジュについて ネパ-ルレッサ-ヒマラヤのクリッペ下底のメランジュの岩石薄片を作製し,鏡下観察を行なった。その結果,以下の事実が判明した。 (1).メランジュを構成するのは主に232人の下盤の始新統,白亜系である。マトリックスは始新統の貢岩(インド亜大陸衝実時のテチス海最後の地層)から成り,ポ-フィロクラストは白亜系の石英砂岩から成る。 (2).ポ-フィロクラストの中には,回転組織を示すものが認められ,それを解析することで,ナップの運動方向を明らかにできる可能性がある。又,MCT(ヒマラヤの主中央スラスト)近傍の眼球片麻岩を採集し,運動方向を示す組織研究のため,研磨面観察を行なった。 2.オリストストロ-ムについて 対馬の対州層群中部層基底の水中火砕流堆積物について,野外地質調査を行ない,次の事実を明らかにした。 (1).大砕流の流下・堆積に先行して,恐らく火山性と思われる地震が発生し,対州層群中に液状化が起こっている。 (2).液状化した地層より上の部分は大規模な海底地滑り帯を成している。その地滑り帯の構造は下位から上位へと次のように変化している。基底の低角度正断層群→横臥褶曲・スラスト帯→箱型褶曲・地層の分断帯→スランプ塊の混在帯。このような変化は,予察調査を行なった島根半島の前〜中期中新世の火砕岩層にも認めらり,水中火砕流発生に伴って頻繁に起こる現象と考えられる。 次年度では構造と組織の観察・解析を更に進め,テクトニックメランジュとオリストストロ-ムに特徴的な構造相の確立に努める。又今年度調査のできなかった泥火山とそれに関連した砕層岩脈の野外調査を行う予定である。
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