研究概要 |
巨大海底地滑りの構造とヒマラヤのナップ下底のテクトニックメランジュに関して,次の新知見を得ることができた。 1.オリストストローム(巨大海底地滑り体)対馬の対州層群に挾まれる海底地滑り層を50kmの亘って追跡調査した。その結果,海底地滑り体内部では基底から上方に向かって構造が次のように規則的に変化することが判明した。即ち(1)基底面付近の砂岩層の液状化による砂岩岩脈,岩床の貫入→基底滑り面とすぐ上部の低再度正断層群→(3)緩やかな波曲構造と上方ほど閉じた褶曲群→(4)横臥褶曲とそれを切る低角度スラス人群→(5)箱型褶曲と根葉し褶曲群→(6)スランプ塊の混在帯。この一連の構造変化は海底地滑りに特有の物で,テクトニックメランジュからオリストストロームを識別する際の指標となり得る。 2.テクトニックメランジュヒマラヤのMain Certra Thrust(MCT)zoneの眼球片麻岩は,プレート境界の地穀の中〜下部で変形作用を被った一種のテクトニックメランジュである。その起源は層状に迸入した優白色花崗岩体の中心部が,徐冷中に剪断され,塑性変形したことに求められる。急冷した部分は早期に固結し,花崗岩となり塑性変形を被むっていない。一方,レッサーヒマラヤの準現地性ナップやクリッペ下底のテクトニックメランジュには,顕微鏡サイズの破砕粒子の回転組織が普遍的に認められる。またMCT沿いの片麻岩中にもガーネットが回転した組織がある。このような回転組織は低角度スラストに伴う剪断帯に特有なものであり,テクトニックメランジュとオリストストロームや泥火山噴出物を区別する際の指標となり得る。 対馬の研究では,大規模な火砕流噴出を伴うような火山噴火が海底で発生した場合,火山性地震に伴って巨大海底地滑りが発生していることが明らとなった。
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