研究概要 |
本研究は,イオン伝導体やマイクロ波誘電体などの機能性材料への設計指針を原子オーダーから解析しようとするものである.プリデライトにおける機能性の発現は,一次元トンネル構造中の大型の陽イオン分布と密接な関係にあるので,その陽イオンの分布様式を明らかにすることを本年度の目的とした. プリデライトは、一次元トンネル構造をもつホランダイト型化合物に属する。トンネル内の席すなわち八面体席をカリウムイオンが占めるものは超イオン伝導をすることが知られている。この席を占める陽イオンは単位格子あたり2つ存在し、その席を占める割合 x/2x100を充てん率とよぶ。この陽イオンの配置は一般にインコメンシュレイトな長周期を示す。このカリウムプリデライトのうちK-Al-プリデライトの生成領域を明らかにし、析出条件を検討した。固相ではx=1.47-1.80の領域で生成するのに対して、融体から得られた単結晶はx=1.5組成近傍に限られることを明らかにした。この相関系に基づき、融体からの徐冷によりK-Al-プリデライト単結晶を合成し、キャラクタリゼーション及び構造解析を行った。 次に、この結晶のトンネル内の陽イオンの分布状態を明らかにし、充填率と長周期の関係を明らかにした。トンネル内のキャビティー中の存在確立の高い3種類の陽イオン位置を明らかにした。それは、トンネル中央に存在するもの、ボトルネックに接するもの、及び中央から少しシフトした位置に存在するものがある。これらの陽イオン位置を基本にトンネル中の充填率によりどの様に陽イオンが分布するかモデルを提唱した。これは基本周期からその6倍の長周期までのコメンシュレイトなモデルである。実際の構造はX線回折からインコメンシュレイトを示すが、それはこのコメンシュレイトな相がインターグロースしたものだとの結論を得た。
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