物体が急激に加熱された場合、激しい温度変化が生じ、衝撃的な熱応力が発生する。このような高い熱応力が一つの曲面で囲まれた物体に衝撃的に発生した場合、物体の外壁から発生した熱応力波は物体の焦点に向って進行する。そして、ほぼ無限大に近い応力が焦点近傍に発生する。この現象が熱応力の焦点化現象で、この現象は殆ど解明されていない。そこで、上記の研究課題を遂行する事となった。この研究は平成3年度より始められたもので、平成5年度に完結した。以下、本研究により得られた研究成果の要約である。 1.熱応力の焦点化現象の球体及び円柱体における解析方法の確立 (1)球体が急激に加熱される際に発生する熱応力波により焦点化現象が生ずる。この現象を波線法を用いて厳密に解析した。そして、この焦点化現象が球体の場合、中心近傍で生ずることを解明した。この研究成果をJ.Appl.Mech.誌に投稿し掲載された。 (2)円柱の断面全体が一様に加熱される事により生ずる熱応力波の伝播を波線級数法を用いて厳密に解析した。この波線級数法は、著者により開発された方法である。この解法により、円柱の熱応力の焦点化現象の特異性がO(r^<-2>)である事を求め、その物理的な意味を明確にした。この研究成果は、日本機械学会論文集に掲載された。 2.熱応力の焦点化現象の基礎理論の確立 (1)直交異方性球体の断面が一様に加熱される事により生ずる熱応力の焦点化現象を解析し、焦点化現象の特異性のオーダーを求め、これが異方性のパラメータの関数になっている事を解明した。 (2)流体力学におけるフォーカシングと固体力学における焦点化現象の違いを明確にし、特に、固体力学の焦点化現象は、膨張波のみでなく、せん断波によっても生ずる事を明らかにした。
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