研究概要 |
時変的な非線形系は,時間軸をRとし,系の状態量が属する微分可能多様体をMとするとき,R×M上で定義されたベクトル場X(t,P)と微分形式W(t,p)によって記述することができる。この表現は,従来の線形系や非線形系の動特性の微分方程式による表現および系の状態の関数による出力の表現を包含する。ここに,出力yは径路積分によりy(t)=∫ W C(u)[to,t]と表わされるのであり,C(u)[to,t]はR×M上の初期点(to,po)より出発し,制御入力u(t)(t←[to,t_1])によって一意的に定まる軌道(制御径路)の区間[to,t]に対応する部分を表わす。系の安定性を保証するリヤプノフ関数は径路積分の特別な場合であり,完全微分形式でないWをも許容するならば最適制卸の評価関数も径路積分により表わすことができる。 平成3年度には,上記の設定による時変的非線形系に対しても径路積分に部分積分公式を適用し,入出力関係の多項式型表現を導いた。この多項式型表現より,制御径路に沿ったFliess型表現および解析性の仮定のもとである点の近傍におけるFliessの関数項級数展開公式を導いた。さらに,積分順序の交換公式を用いてVolterra核を導びき,Volterra級数型の表現も得られることを示した。入出力関係の設計にこの多項式型表現を用いると,制御径路に沿ってデカップリング条件がなりたっていると,状態フィ-ドバックにより入出力関係の無干渉化が可能である。さらに,出力フィ-ドバックを用いて入出力間のそれぞれの伝達関数をあるていど指定できる自由度がある。このことは,安定性の指標,最適性の指標および出力の形を別々に制御する多目的制御の可能性を示す。 また,このデカップリング条件がなりたたない場合の入出力関係の線形化に用いられるDynamic Extension Algorithmも,部分積分公式の適用により導き得ることを示した。これらの成果は遂次論文として公表する。
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