水中曳航システムは海中探査のための基本的な技術の一つであるが、これまで水中曳航体の制御技術は深度制御が中心であり、安定した姿勢で広範囲に移動可能な海中プラットフォームとして利用しようとするには、知的な水中曳航システムを構築する必要がある。 本研究では、安定した姿勢で横移動や縦移動が可能である胴体と複数の翼からなる水中曳航体を提案した。また、知的な水中曳航システムの構築を目的とした階層的制御システムを提案した。制御システムは、下位から上位へと姿勢制御、誘導制御、経路計画、通信から成り立っている。姿勢制御では運動の非干渉化を行う縦方向と横方向の二つが独立に作動する。誘導制御は下位の姿勢制御部とは非同期的に作動し、姿勢制御の目標値を与える。制御アルゴリズムにはファジィシステムを用いており、これによって誘導制御部においては設定経路との偏差から姿勢制御の目標値を決定し、姿勢制御部においては運動の非干渉化を行うことができる。 姿勢制御は最近の航空技術の一つで、運動成分の非干渉化を可能とするCCV技術を基にし、二つの運動非干渉化モード、(I)ピッチ角と上下速度、(II)ロール角、ヨー角および横移動速度、からなるものを用いた。数値シミュレーションを用いて、曳航母船の鉛直面内の波浪中運動や水平面内の振動的な潮流の外乱応答を調べ、姿勢制御法が有効であることを明らかにした。誘導制御では、横移動制御、深度制御、横移動と深度の同時制御、海底から一定高度で航行する高度制御について各々制御戦略をたて、数値シミュレーションを通して姿勢制御の目標値の取り方や外乱下での曳航体の制御性能を調べた。今後、実験機によって提案した姿勢制御および誘導制御の検証と、制御システムの経路計画部と通信部の検討を行っていく必要がある。
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